退職金課税見直し、勤続30年2500万円→45万円減の試算 - 日本経済新聞
タイトルは素直な今の気持ちです。ネット上の人ならともかく顔の分かる人が、中身を読まずタイトルだけで即レスしているのかなりキツい。想像よりもきつかったので供養する意味でも書いておきます。
今回の記事は有料部分にも踏み込んでいるので、内容をそのまま転記してない部分があります。
1 そもそも、コレは試算です
「プリエミネンス税務戦略事務所の佐藤弘幸税理士の協力」「控除額を(中略)3パターンで、別途課される住民税を含めてはじいた」と書かれてる通り、日経新聞が税理士に依頼して計算してもらったものです。もっというと、今回の税制調査会では特段計算・数値については書かれていないので勝手に設定したものです。
今現在の制度は20年までは年数*40万円の控除、20年以降からは70万の控除。例えば40年で退職なら2200万まではもらっても税金がかからない。
今回のモデルについても突っ込みたいけどあとに書く。
タイトルの主語がないのでどうかと思う。日経は「消費税見直し、国民負担率世界一の試算」ってタイトルで配信してはどうか???めちゃくちゃクリック数稼げると思うで?
2 そもそも、モデルが不適当じゃない?
30年で2500万円ってなんだよ。国税庁のモデルがそうだからと言って、それで計算する必要ある???
厚生労働省の出してる調査
ここにデータがあるとおり、大卒30年目だと2000万無いです。1900万ぐらい。60歳までで2500万〜2600万まで行くみたいです。
高卒だと、定年まで行っても2000万無いです。
中小企業のやつもおいておく
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/r4/
中小だと1000万円超えるぐらいでストップします。
30年目の控除が20*40+10*70=1500万円になります。
ちなみに、40年目で2200万控除。2500万の退職金だとしても、控除引いて300万、1/2かけて5%なので7.5万円になります(復興特別所得税と住民税とかを除く)。
30年目で2500万というのが現実離れした金額であることをなぜ日経は無視するのか。国税庁のモデルが計算のための架空の事例ということを理解するべきでは?現実の退職金では控除額のほうが大きくなるから税額0円となってしまい、例として不適切であるから大きな金額となっていることに思い至らないのか???
3 控除額の設定が不適切じゃない?
今回の記事の大部分の引用になってしまうのでちょっと詳しくかけないんだけど、勝手に控除額変えて45万円増えるという記事なんですよね。もちろん増えてることから分かる通り、控除額を勝手に消してるわけなんですよ。その方向性があってるかどうかについて突っ込む。
税制調査会の報告書について
https://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/5zen27kai_toshin.pdf
「現行の課税の仕組みは、勤続年数が長いほど厚く支給される退職金の支給形態を 反映したものとなっていますが、近年は、支給形態や労働市場における様々な動向に 応じて、税制上も対応を検討する必要が生じてきています。」と書かれてる。
この様々な動向に応じてっていうのが気になりますよね。更に引用すると
「(1)働き方など個人のライフコースの選択に中立的な税制の構築 (中略)転職機会の増加に伴い、労働者の企業間移動の円滑化のための環境整備が求められてきています。」と書かれてるわけ。
私の理解では、「新卒から定年まで働く人と、何度か転職を重ねる人で合計で同じ金額の退職金をもらうのに、退職金控除が累計年数によって変動するので、短く小刻みにもらうほうが不利になりがちなので、そこを是正するよ」と読み取れるのね。
だったら、控除額のモデルを後半部分の優遇措置だけをなくすようなモデルにするのは不適切だと思うんですけど?
しかも、不適切なモデルを使って一番増税になる部分だけをタイトルに持ってくるのは不適切に不適切を重ねるようなものだと思うんですけど?
4 自分の考える退職所得控除について
ここまでこき下ろしておいて、全く自分の考えを述べないのはフェアではないので書いておく。
「転職してもその勤務年数を繰り越す制度に政府が変更する」「退職金を後払い賃金の意味合いから、現在の賃金に反映させるインセンティブ制度の創生」「idecoの受け取りの際に退職所得控除を利用するのが一般的になるような動きが生まれる」
理由を簡単に書く。
年金制度の維持は難しい。そして、日本政府は、idecoを推している。idecoについて考えれば、アメリカの401Kのように自助努力の積立を意識しているのは明白。今現在、退職金の積立自体に
そして、日本政府は雇用の流動性を高めたい考えがある。
つまり、アメリカ式の自助努力の積立を支援し、年金制度を維持するために年金はあくまで最低限のものになり、退職金を廃止し、給与に反映させたがっているのではないか?と考えています。もっというと、idecoの引き出しも自由化されると思います。
よって、雇用の流動性を保つために「転職してもその勤務年数を繰り越す制度に変動する」し、また勤続へのインセンティブをなくすために「退職金の長期的な廃止」をおこない、そのかわりにidecoなどの自助努力にインセンティブを与えるために「idecoの受け取りの際に退職所得控除を利用するのが一般的になる」ではないかな?
以上。