話題は早めに消化したいので書いておきます。
0 前提について
埼玉県営公園で女性の水着撮影会が行われます。未成年も出演するという情報については調査中です。城下のり子・伊藤はつみ・山﨑すなお県議は、本日、都市公園法第1条に反するとして、貸し出しを禁止するよう県に申し入れました。https://t.co/mbFYa9uHOz https://t.co/OtojtOm9N5
— 日本共産党埼玉県議会議員団 (@jcp_sai) 2023年6月6日
水着撮影会の中止が話題です。そして炎上しています。
ざっくりとした流れでは、
過去から同じ施設で行われている水着撮影会が、公園管理の方から中止のお願い→主催者が中止の受け入れ。
【県側のルール】
過激な水着や過激なポーズの禁止を当初から許可条件としていた
【協会側のルール】
・公序良俗に反しないことを許可条件(2022年12月まで)
・2023年1月に過激性の制限ルール、6月に未成年の出演禁止ルールを補足追加*1
私自身も過去のブログでは、あいちトリエンナーレのときに、
今回の騒動をきっかけに表現の自由とヘイトスピーチのバランスというものが深く議論されるようになれば良いと願うばかりである。
表現の不自由展(あいちトリエンナーレ)の中止についてつらつらと書く - fclbrのブログ
というふうに、むしろこのまま開催して、司法の場まで行って白黒つかねーかなと思ってたクチなので、今回も最後まで訴訟になって欲しいなーと思ってます。
1 そもそもお願いベースの中止はどうなのよ
まず、第一に今回の騒動、強制的に中止になったわけではありません。というか、あくまでお願いベースなんですよね。ただ、ちょっとお願いベースでやるには規模がでかすぎる。2日前に「撮影会中止して」とか流石に困るだろ(当然の感想)。
本来から言うと、行政指導はただのお願い、具体的に言うとコロナときとか、行政指導に従わなかったらといって罰金が出なかったのと一緒。まぁ、あれは名前をわざわざ放送で読み上げるとか、どう考えても制裁的公表なのどうかと思うけどね。本来から言えば行政指導は
行政指導に携わる者は、行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意し、相手方が行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱い(別の場面で許認可等を行う場合に意図的に差別的な扱いをするなど)をしてはならない(第32条)。(
))
って、書かれてる通り、お互いに納得してることが前提なんですよね。
ちょっと補足なんですけど、なんでここで強制的に中止させないかって言うと、不利益処分になってしまうから。
行政庁は、法令に基づき、特定の者に対し、直接義務を課し、又は権利を制限する処分(不利益処分)を行う場合には、原則として、意見陳述のための手続(聴聞又は弁明の機会の付与)を執らなければならない(第13条第1項)。また、原則として、不利益処分と同時に理由を示さなければならない(第14条1項)。
なお、行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる具体的な基準(処分基準)を設定し、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない(第12条)。
不利益処分すると面倒なんですよね。多分今回のケースだと、処分自体難しかったんじゃないかなぁと思います。
逆に言うと、お願いを聞いてしまった以上、訴訟起こしても勝てるんでしょうか?コロナのときの時短要請の訴訟は勝訴しましたけど、賠償は認められなかったんですよね。勝訴できても賠償は難しそう。
2 公共施設の利用の制限はやりすぎじゃない?
県営プールで今月開催予定の民間主催の水着撮影会が中止の方向で検討されていることに様々なご意見をいただいています。
— 大野もとひろ 埼玉県知事 (@oonomotohiro) 2023年6月9日
県営プールは、指定管理者である埼玉県公園緑地協会が管理運営。撮影会の開催許可も協会が行い、主催者に対し過激な露出の水着やポーズを禁止することを条件に許可していました。
しかし、過去の撮影会の参加者のネット投稿内容等から、主催者が許可条件に反する行為を行っていたことが判明したため、協会では今後同様の撮影会は許可しないこととしたと聞いています。
— 大野もとひろ 埼玉県知事 (@oonomotohiro) 2023年6月9日
今後、同様の撮影会は禁止します?????
追記始まり
●条件策定後に違反が認められない者に対し中止させることは適切ではない旨伝えるとともに、しらこばと公園の1者と川越水上公園の3者の中止要請を撤回すべき旨を指導しました。なお、6月に開催予定のなかった加須はなさき公園を含めた県営3プールのルールや
— 大野もとひろ 埼玉県知事 (@oonomotohiro) 2023年6月11日
後出しジャンケンやめろ。2日かけて撤回させる理由はなんや???
追記終わり
まず、公共施設の利用制限っていうのは普通されない。
ヘイトスピーチと絡めてわかりやすく解説しているのがあったのでここの引用する。*2
(公の施設)
第二百四十四条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に 供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。) は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱 いをしてはならない。
よく言われる、上尾市福祉会館事件とか泉佐野市民会館事件でも触れられてる通り、公の施設を貸し出すっていうのは結構強い権利なんだよね。そうしないと、社会的弱者の立場が集会を開いて意見表明したり(表現の自由・集会の自由)を奪っちゃうからね。
上の脚注のPDFで触れられてる通り、公共施設の利用は強い権利ではあるけど、ヘイトスピーチとかを禁止するために、ガイドラインを作ったり、審議会があるんだよ〜って説明してる。
逆説的にいうと、このガイドラインを見て「ヘイトスピーチはいけないことなんだな、改めるか!」って改心した団体なら多分利用を拒む事はできないと思う。
では、今回のケースは埼玉県の公園ですので条例を拾っていきます。
(行為の禁止)
第八条都市公園においては、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 都市公園を損傷し、又は汚損すること。
二 土地の形質を変更すること。
三 竹木を伐採し、植物を採取し、又はこれらを損傷すること。
四 動物を捕獲し、又は殺傷すること。
五 立入禁止区域に立ち入ること。
六 禁止された場所に車両を乗り入れ、又は止め置くこと。
七 ごみその他汚物を捨てること。
八 その他都市公園の設置の目的に反する利用をすること。(行為の許可)
第九条都市公園において、次に掲げる行為をしようとする者は、知事の許可を受けなければならない。許可に係る事項を変更しようとするときも、同様とする。
一 物品の販売、興行その他の営業行為をすること。
二 募金、署名運動その他これらに類する行為をすること。
三 業として写真又は映画等を撮影すること。
四 競技会、集会、展示会、博覧会その他これらに類する催しをすること。
五 花火、キャンプファイヤー等火気を使用すること。
六 はり紙、はり札その他の広告物の表示をすること。
2 前項の許可は、当該許可に係る行為が次の各号のいずれかに該当する場合は、これをしてはならない。
一 都市公園の管理上支障があると認められるとき。
二 公共の福祉を阻害するおそれがあると認められるとき。
三 その他都市公園の設置の目的に反すると認められるとき。
まぁ、普通の内容ですね。
三 業として写真又は映画等を撮影すること って書いてあるので、撮影会自体はOKですね。
どこが違反してるかというと、記事からの引用ですが*3
主催者が公開している過去の開催動画を検討させていただき、非常にわいせつなポーズやわいせつなしぐさが多数含まれていた、と判断せざるをえない。加えて未成年が参加しているという情報の2つ。都市公園法第1条の『公園の健全な発達』『公共の福祉』にもとるのではという判断をした」という。
具体的になにがわいせつに当たるかについては事務局長が女性、記者が男性であることから「口頭でいうのはセクハラ行為にあたる」との理由で明言を避けた。
とのこと。
なんで1条から不許可・許可を判断しているのか???明言を避けたら基準の意味がないだろ????
前項で触れた通り、公共の利用っていうのは強い権利なので、断るときには基準を明確化しておかないと困るんだよね。ヘイトスピーチに関してもこういうのはアウトだよ〜って教えてるぐらいだし。
2-1 利用制限自体が問題じゃない?
そもそも、わいせつなポーズやわいせつなしぐさをアウトにすること自体問題があると思う。基準が極めて曖昧な上に、そもそも、しぐさやポーズ自体は法に触れてない。表現の自由に引っかかる気がする。全裸とかなら刑法で引っかかるからわかるけど、法もないのに規制すること自体おかしいと思う。
未成年者の水着撮影は、道徳的にどうなんだ!という意見はわかる。ただ、道徳的にどうなんだ!って言い始めるとそもそも女性が肌を見せるのはどうなんだ!っていう意見と変わりなくなってしまうのでおいておく。
では、具体的に法に引っかかるかというと・・・多分規制する法律はない。児童ポルノは該当しないし(と言うか、めっちゃ強い言葉だから安易に児童ポルノ認定しないでほしい)、もちろん刑法のわいせつ云々には引っかからない。一番引っ掛かりそうなのは埼玉県の条例のJKビジネスの規制なんだけど*4、異性の客に対する接客云々が必要なのよね。ちょっと過去の投稿見ると異性に対する水着見せる姿はあるけど、あくまで撮影会なので該当するかというと難しいと思う。
ちょっとここでJKビジネスについて調べてみると、撮影会で捕まったケースは確かにある。けど、それは個人での撮影会に客を募って撮影会にさせたやつが捕まってるケースなんだよね。今回みたいに主催者が一貫して撮影会であるし、被写体の方も撮影会であると認識している。つまり、摘発逃れの仮装をしているわけではないことを考えると一発アウト判定はあまりにも厳しい、それに、それはアウトかセーフかを判定するのは警察や裁判所を通すべきでは???
3 考えられるシナリオと結論
おそらくここまでの情報をつなぎ合わせると、公園管理者がそれなりに気を使って水着撮影会を許可して上手く興行を行ってたところに、共産党からの申し入れもとい圧力に現場が屈し(OR上に報告して上も折れた)、中止を公演側から申し入れ、主催者も了承。しかし、思った以上に燃えたため、知事は特定の団体からの圧力がなかったと言い出して、共産党も申し入れただけであると言い始めた。
つまりのところ、思った以上に燃えたので現場に責任を押し付けてるんじゃねーの?というのが思うところである。
個人的には、公の施設の貸出については未整備のところもあるし、これをきっかけに不必要な規制は取り払い、ルールを整備し、水着撮影会が行われる場を守っていくことが大切なのではと思いました。
むしろ、変に追い出すとアングラ化するのは見えてるからな・・・・。
4 未成年者の水着はなくなるかも?
ちょっとここで調べていて思ったのは、未成年者に対する水着撮影はその属性、客、被写体の関係でセーフアウトが変わりがち。これはコンビニでエロ本撤去されたときにも思ってたことなんだけど、「規制や検閲というものは上からの圧力で行われると思われているが、むしろ民間の方から規制や検閲は行われる」というもの。エロ関係のクレカ規制とか見てると、リスクを取りたくない事業者や巨大プラットフォーマーなんかが幅を利かせると、民間の方から自主規制とともに自ら自由を制限してしまうんですよね。
今回みたいな自主規制(ここでは公園側が責任回避のために本来警察が担当するべき指導を勝手にしてしまっている)が広まると、そもそも未成年者の水着撮影会はリスク回避のために取りやめるという話になりかねない。
むしろ、今回の騒動で未成年者の水着撮影会は公共施設でバンバンしていいよ!潜ってアングラ化してしまうと犯罪の温床になりかねないから!というメッセージを送ったほうが、当人の表現の自由を守り、事業者のリスクを減らし、お互いの同意が明確されることが男女共同参画社会にもつながるかと思いました。
以上!