コロナ補償に関しての覚書〜「自粛と補償はセットだろ」はどこを基準に考えればよいのか?

前回

コロナ補償に関しての覚書〜各国の休業補償はどのようなものか? - fclbrのブログ

前々回

コロナ補償に関しての覚書〜各国の現金給付はどのようなものか? - fclbrのブログ

 

今回は

News about #自粛と補償はセットだろ on Twitter

について、諸々書いておく。

 

1 支援策に違いが生じる理由

 今回の自粛と補償のセットにおいては、海外との比較はあまり見られなかった。

 少なくとも現金給付のときや休業補償のように比較するツイートは私の観測範囲では確認できなかった。他の国も大規模には行っていないので批判しにくかったのだろう。こういうときだけ他国を引き合いにせずにしていくのは賢いと思った。
 そもそも、事業者への支援策というものは各国によって違うものだ。

 支援策予算額は一般的に、国の豊かさ×国民負担率×(社会保障支出+経済対策支出)によってざっくりと計られる。

 国が豊かであればあるほど、国民に課せられる税負担率が大きければ大きいほど、そして、政府が支出する割合が高ければ高いほど、対策費というのは大きくなる。小さい政府であれば、自助努力が求められていくだろうし、大きい政府なら高福祉が見込めるだろう。

 また、今回の場合はコロナによる影響の大きさによっても支出は変わると見るべきだろう。例えば、コロナの影響によって国がパンクしているなら、なりふり構わず歳出を増やすのは当然と言える。また、医療現場が崩壊しているならそこに重点的に予算を費やしていくだろうし、先に経済の混乱が起こっているなら経済へと歳出を出していくだろう。

 また、前回、前々回においても触れたとおり、どのようにその対策費を使っていくかは当然違いが出てくる。例えば、雇用関係の解消が容易なアメリカとイギリス及びシンガポールでは、アメリカが失業給付の対象者拡大に努めたのに対し、イギリスとシンガポールでは、給与を会社が労働者に100%支払う(国はそれを条件に補助金を出している)といったように違いがある。(もっというと、そもそも、シンガポールでは失業保険は存在しないのでこういう形以外無いのだが・・・)。

 このように、支援策一つとっても単純比較できない事がわかる。OECDのなかでは小さい政府に位置づけられている日本がどのくらい出せばよいかということも踏まえると、大きい支援は難しいのではないだろうか?

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2 自粛の方法に違いが生じる理由

 自粛一つとっても各国それぞれ対応は違う。 

東京新聞:<新型コロナ>都市封鎖 各国に差 外出で罰金、逮捕も 東京はどうなる?:国際(TOKYO Web)

 罰金制度を導入する国、もっと強い刑罰制度を導入する国等、その対策も多種多様に渡る。もちろんこうした強い自粛をすればするほど、人権は制限されることに注意が必要だ。そのため、強い権限が政権に与えられていれば素早く強力な対策を打つことが可能であろう。もちろん、この自粛命令は独裁にも繋がりかねず、いい面ばかりではない。ほんとに今の政権が独裁ならこれにかこつけて人権抑制していると思う。
 例えば、今回のコロナ対策で世界から見ても優秀な抑え込みに成功している韓国においては、住民登録番号という、日本におけるマイナンバー制度(住民登録番号のこと、冷戦時にスパイ防止のために作られた)を運用していたことや、感染者の足取りを広く公開する等の対策が見られる。また、感染が確認された場合、感染者のスマートフォンやクレジットカードの使用履歴、監視カメラなどの情報などを用いて感染されるまでの感染経路を把握し、公開していることも韓国が抑え込みに成功している原因の一つだろう。

日本が韓国の新型コロナウイルス対策から学べること──(2)マスク対策 |ニッセイ基礎研究所

日本が韓国の新型コロナウイルス対策から学べること──(3)情報公開 |ニッセイ基礎研究所

また、他の抑え込み成功国でもある台湾でも身分証の携帯義務があるなど、そうした管理国家であれば、(人権の抑制には目を瞑れば)こうした感染症の対策は容易になるだろう。

3 結論

 正直、自粛と補償のバランスの兼ね合いは難しいものに感じた。上で述べたように、損失補償は世界的に見ても少数派であるし、もっと言えば前々回で触れた現金給付に関しても、外国人も対象にする、収入に差をつけない無条件給付であることを考えると大盤振る舞いといっても良いはずだ。加えて、中小企業などに対しては100%の休業手当を目指しており、これも、他国に遜色ないというか、はっきり言えばかなり手厚いサポートになっていると感じる。大騒ぎした割にはそこまで批判を呼ぶことだろうか?というのか率直な感想だ。きっと、次の対策についてもあれこれ批判が飛び交うのだろう。そして、正しい情報の周知や訂正などが行われる前に、新しい批判がまた生まれるのだろう。こうしたことをまとめて書いている身としてはなんともやるせないものである。