金融庁の年金レポートに関する忘備録

 

1 はじめに

 金融庁から「高齢社会における金融サービスのあり方」など「国民の安定的な資産形成」に関するレポートが発表された。

 レポートでは、"収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合 には、20 年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。(pp16)"*1といった内容が書かれ、このことから政治家や官僚に対する批判の声が高まった。

※2018/6/3には、(案)が取れたレポートが正式に発表されている。*2

 では、過去の人々はどうやってこの不足分を補っていたのであろうか?

1−2 いままでの老後の生活

 そもそも、政府見解としては

"厚労省の木下賢志年金局長は13日の参院厚生労働委員会で、「私どもは、老後の生活は年金だけで暮らせる水準だと言ったことはない」と述べた。"*3

 であり、また下記事でも指摘されているように、どうやら随分前から、年金だけでは暮らせない実情は把握されていたようである。

"1984年、郵政省が出した資料の試算によると、当時の60歳以上の預金目標額は2050万円だが、実際の60歳以上の平均預金は884万だった.そして、当時の平均余命から60歳以上が亡くなるまでの約19年で必要とするのが5885万円と試算し、その19年間の厚生年金支給額が概算で3265万円なので、不足額が2619万円だとそろばんを弾いている。"*4

 また、過去における年金の所得代替率は60%程度ほどであったから、今の水準と比べても、特段高い訳でもなかったようである。*5

 以上のデータから、過去においても今と同様の老後における資金不足の問題が存在していたことがわかる。

 しかし、金融庁レポートにもあるように、退職金による補填、世帯人数が多かったことによる扶助等があったためその不足分は補われていたようだ。

(じゃあ、なんで寝耳に水みたいな反応が多かったのだろうか?もしかして、年金だけで安心!の考えの方が多かったのかな?)

1-3 これからの老後の生活

 では、これからの老後の生活も同じように不足分を補うことができるだろうか?

 金融庁のレポート及び財政検証から推察すると複数の点から、それが難しいことと考えられる。

 1つ目に給付水準が未来においては低くなる事があげられる。2014年における財政検証レポート*6によれば、複数のケースが検討されており、例えば2060年における、合計特殊出生率が1.35、平均寿命が男-84.19歳、女-90.93歳におけるケースEでは、所得代替率が50.6%と試算されている。なお、現在においてはマクロ経済スライドを行うことにより、所得代替率は50%に成るまでは維持される見込みであるが、その50%になった場合においては、給付及び負担のあり方について検討が行われる予定である。このことから、将来においては給付水準が低くなると見込んでもよいだろう。(それって、50%になる可能性もあるんじゃ?、あと2019年の検証レポートも参院選前にはほしいね!)

 2つ目に、退職金による補填が難しくなる点があげられる。金融庁レポートによれば、1997年には大卒・勤続35年以上で3203万であったのが、2017年においては1997万まで減少しており、また、退職金自体がない企業も88.9%から80.5%と減少している。また、働き方の多様化やフリーランスの存在を考えれば退職金での補填はますます難しくなると考えられる。(憶測だけど退職金の受け取りが勤続年数で有利になる点も是正されるんじゃないかな?)

 3つ目に、平均寿命が伸びることにより生活資金が増大することがあげられる。財政検証における予想では、男-84.19歳、女-90.93歳となっていることから、ますます、多くの資金が必要になると考えられる。加えて、高齢になれば医療費や介護費といった費用も増大するため、今まで以上の不足分が発生すると考えられる。

1-4 結論

 以上の点から、「老後2000万必要の言論は目新しいものではないが、この先において老後生活を送るには、今までとは違ったアプローチが必要になる」がと言えるだろう。

 

 

 というか、老後2000万必要!の面ばかりが先走っていて、今まではどのように生活してきたのかとか、これからは何が問題なのかとかがあんまり見えてこない。何より政争の具になってしまっているのが残念でならない。デモもいいけど現状把握の勉強会とかも同じくらい発生したりしねーかな。

 加えて、金融庁レポートにはインデックス投資の優位性とか、財産形成につながる有益な情報も載ってたから個人的にはこのレポート無料でもらってええんか?ぐらいやし、金融庁はいい仕事したんじゃね?あんなふうにレポートが扱われているのを見ると職員も報われんやろうね。

 次は、財産形成について書く予定